6.わたしも、どこか隠れようかなっ。

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「じゃあ次は、先に見つかったおねえちゃんがオニね」  そういって、二人はすぐに走り出した。    わたしは、目をつむり数をかぞえる。    いくつ数えればいいんだろう? 十……は少ないかあ。じゃあ、百? ちょっと長いかなあ。    とりあえず、五十のところで、 「もう良いかーい?」と確認してみる。    ――返事はない。    もう探し始めてもいいのかな。    辺りを見回してみる……が、当然二人の姿が見えるはずもない。    二足歩行のウサギの出てきたイカ型のロケットが、絵に描いたような赤とオレンジの炎をあげながら、真っ黒の海へと飛んでゆく。一つだけ付いた窓からこちらを見ている気がしたので、わたしは手を振った。    ウサギって、どう鳴くんだろ?    二人を探して歩き回る。そんなに遠くへは行かないはずだからと、近場の物陰を探しまわる。    うーんと、あとどこ探してないかな。    ……ああ、あそこか……あそこは、さすがにいないよね。    その場所に近づいてみる。そこは、三角形の建物の残骸。わたしが先ほど隠れていた場所。 「誰か居ますかあ?」    と確認するように中に声をかける。 「だ、誰もいません事ですわよっ」    その、誰もいないという空間から、無理に高くして、震える女の子の声が返ってきた。    少ししゃがみ、中を覗き込む。 「み~つけたっ」    さっきわたしが座っていた場所と、同じ場所に同じ形でヒイが座っていた。声をかけると、すねたように唇をとがらせながらその場所から出てくる。 「どうして、同じ場所に隠れてたの?」 「だって、さっきと同じ場所に隠れてるなんて誰も考えないでしょ。だから……」 「まあ、それは、そうだけどさ」    付近を見回し、セイを探す。    ヒイは見つかって悔しいのか、ふてくされているのか、三角形の残骸の横に座り、どこか空中を見つめている。    さて、他にどこか隠れられるような場所あったかな? もしかして、遠くまで行っちゃった?    相手はあのセイだから油断できない。そう心の中で念じながら探し続ける。    ――見つからない。    近くの物陰は全部探したはず。なのに、見つからない。    そういえば、ヒイとセイが二人でかくれんぼした時に隠れてた場所って……。    勢いよく振り返り、空を見上げる。    いくつか並んだ星。全部を確認できないような数じゃない。 「ねー、もう飽きちゃったよー」    降参ということで、二人でセイを呼んでみる。しかし、なかなか返事がない。    少し心配になり、声を大きくし呼び続ける。    近くに、さっき飛んで行ったウサギのロケットが、音を立てず、カラフルな光を上げながら降りてきた。    扉が開き、二足歩行のウサギが出てくる。一人、二人、そして最後に、なぜかセイが出てきた。 「また、見つけられない、なんて、だらしないなあ」    得意げに言うセイ。    いや、乗物に乗って移動するのは反則なんじゃないかなあ……。とは、どうにも大人げなくて言えない。    ヒイも何も言わないので、黙っておくことにした。 「じゃあ、次はセイがオニねっ」    とヒイは自信満々に言う。しかしセイは、 「ぼくはね、追うより、追われるタイプ、なんだ」    要するに、オニ役をやりたくないらしい。    それを聞いたヒイは頬を膨らませ抗議しようとしている。 「あ、あのさっ、わたし疲れちゃったから、休憩にしない?」    そう言うと、二人は同時に「仕方ないなあ」と言った。    セイがそれを言うのか……。    右からセイ、ヒイ、わたしの順で地面に寝転がりながら星を見る。
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