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1.こんなことを考えながら、華のないルーチンワークのように毎日は過ぎる。
人生というのは退屈の連続だ。
十七歳、高校生のわたし――小鳥遊 恭子ですらそう思えるのだから、大人はもっとだろう。
今日もわたしは、朝の七時に、ケータイの機械的なアラーム音で起床し、寝癖も直さず、すぐに高校指定の左胸のところによく分らない校章のはいった白色カッターシャツ、黒に近い紺色のスカート、最後にえんじ色の後ろのジッパーで止めるタイプのネクタイつけて、制服に着替える。そうしてから、一階の洗面所に向かう。
なぜ、制服に着替えてからなのかと言うと、一階に下りてからもう一度この二階の部屋に戻ってくるのが面倒だからだ。
洗面所でまだ寝ぼけているような顔を洗い、歯を磨いて、寝癖を直す。この寝癖を直すというのが、わたしの場合は結構厄介者で、人よりほんのちょっぴり手ごわい髪の毛は何度櫛を入れてもなかなか倒せず、かなり時間をとられてしまう。本当は寝癖だろうがなんだろうがどうでもいいんだけど、起きたままの髪型で学校に行こうとするとお母さんがうるさい。朝からよくそこまで声が出るなと感心してしまうほどうるさい。
ようやく寝癖が治ったので、ダイニングキッチンに向かい「おはよう」と小さな声で言いながら入る。いつも、息苦しさを感じる。
お母さんは、忙しそうに、わたしとお父さんのお弁当を用意していて、お父さんはすでに朝食を食べ終わったらしく食器をそのままに、優雅に新聞を広げ読んでいる。テーブルの上を見るとご飯とお味噌汁。あと目玉焼きが用意されていたので、席に着き食べる。その間は、誰も一言も話さない。まあ、そっちの方がわたしは楽なんだけどさ。
私が食べ終わる直前、お父さんが置いてあったお弁当を持ち「行ってくる」と誰に向かって言うだけでもなく言い「気をつけてね」お母さんが言う。「行って、らっしゃい」わたしもつられて、呟くようにぼそっと言う。
お父さんが家から出たのを確認すると、突然お母さんは爆発したかのように話し始める。
内容はお父さんに対しての愚痴だったり昨日の放送していたドラマの内容だったりと、要するにどうでもいい内容。
最近気づいたのだが、お母さんはわたしに話を聞いてもらいたいのではなく、自分が話していたいらしく、わたしが内容を理解しているかは二の次。よって、わたしも聞き流して軽く相槌だけ打っておく。
本当はしゃべるのが大好きなお母さん。でも、いつもはお父さんが騒がしいのを嫌っているので我慢している。
なぜ、二人は結婚したのかを聞いたことがある。
お父さんは「あいつは、猫を被るのが上手いんだ。要するに騙されたんだよ」って、懐かしそうに言っていた。
お母さんは「周りが結婚ラッシュで焦ってたのかしらねえ。間違えちゃった」って、笑いながら言っていた。
二人は仲が悪いわけではなく、これはこれで上手くいっているみたい。
わたしは食べ終わると、置いてあったお弁当を奪うかのような速さで取り、無理やりにカバンの中に押し込み、逃げるように玄関から出て学校に向かう。
ドアから外に出て、一度深呼吸をする。
やっと、呼吸ができた気がした。
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