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「あ!あった!」 「あ、それは私の眉毛用のハサミで・・。」 「そーい!」  京子の説明も聞かず、順平はその眉毛用ハサミを鼻の中に突っ込むと、ハサミをジョギジョギさせながら、鼻の穴の内側を一周させた。  ハサミを鼻の穴から抜くと大量の鼻毛がハサミにまとわりついていた。  順平はそれを見て、手ごたえを感じた。 「これでよし。」 「ぎゃあぁ~!私の眉毛バサミ~!」  京子は悲鳴を上げながら、順平の手から鼻毛まみれの眉毛用ハサミを奪い取った。  そんな京子を気にもせず、順平は切り落とした鼻毛が、顔や服に残っていないように両手で体中を叩いた。  そして、京子の実家の前に立ち、やがてくる京子のお父さんの威圧感に対応できるよう身構えてから、京子に話しかけた。 「さあ、約束の十時まであと十秒だよ、京子ちゃん。」 「うえ~ん!」  京子は泣いていた。 「どどど、どうしたの!?京子ちゃん!」 「私のハサミ、順平の鼻毛まみれ~。」 「しょうがないでしょ?二人の未来がかかっているんだから。」  京子からすると訳のわからない言い訳をする順平を睨み、京子は吠えた。 「なにそれ!?わけわかんない!私の化粧道具が汚された~。」 「わ!もう十時!行くよ!」  順平は玄関のインターホンを押した。ガラガラッと激しい音をさせながら玄関の引き戸が開いた。  引き戸の向こうには、京子のお父さんが、見慣れた厳つさで立っていた。
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