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順平は渡されたリセットボタンを見つめながら、素直に叫んだ。
「って、オモチャじゃん!」
「まあ、オモチャでもなんでも、失敗してもやり直せるって思うようにしようよ。」
ああ、これは京子ちゃんがリラックスさせようとしてくれているんだな、と順平は思った。しっかりしなければ、と順平は反省した。
「そ、そうだな。当たって砕けろ!だ。」
順平は決意を新たに、リセットボタンを上着の右ポケットに入れた。
「あ、そうこう言っているうちに、ここが私の家でーす。」
「よし!いくぞ~。」
「あ、待って!」
「え?」
せっかく心が決まったのに、と順平はヤキモキした。
「約束の時間、午前十時まで、あと十秒。」
「え?そんなにきっちり!?」
「お父さんは時間に厳しいから。約束は十時って言えば、一秒前後しても殺されるって言うか。はい、サン!ニー!イチ!」
「殺され・・あわわわ。」
緊張する順平をよそに、京子は玄関のインターホンを押した。
ピンポーンのポぐらいで、玄関のガラスの引き戸が爆発したかのように激しい音を立て開いた。
そこには京子の父親が立っていた。
鬼のような京子の父親を見て、順平の緊張は頂点に達した。
「あ、あ、あの、おと、お、お義父さん!」
返す刀で、京子の父は怒鳴った。
「お前にお義父さんと呼ばれる筋合いは、なーい!」
順平はもう駄目だった。
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