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「そ、そうだな。よし。俺も男だ!」
「よっ、順平屋!」
順平はポケットからリセットボタンを取り出し、掲げ、高らかに宣言した。
「よしっ。この瞬間、弱い俺は捨てる。リセットボタ~ン!あ、ほれ、ポチッとな。」
順平がボタンを押した瞬間、世界がグニャっと歪んだ。
時空に穴が開いて、そこに順平も京子も、世界全部が吸い込まれるように消えた。
世界が吸い込まれた直後、その吸い込まれた点から光がポンッと弾け、ブワッと広がり、一瞬で世界は元に戻った。
「あ~、なんか気持ち悪い。ボタンを押した瞬間に世界がグランと動いたような。」
「ちょっと、しっかりしてよ~。しっかりカリカリ・カリビアン!」
「なにそれ?笑えない。」
「今日の緊張をほぐすために考えたギャグ。寝ないで考えたんだよ。」
あれ?さっきも見たぞ、この、両手で大きなハートを作るポーズ、と順平は思った。
「あれ?この会話、さっきもしたような・・。」
京子も同じ感覚を味わったのか、大きなハートを作った両手の感触を確かめるように、何回か動かしながら言った。
「あ、本当。私もそんな気が・・。」
と、言いかけて、京子は思いついた。
「これってデジャブじゃない?」
「あ、デジャブね。」
順平は何かのチカラに流されそうになったが、流されなかった。
「あれ?京子ちゃんの家の前じゃない。」
「なに言ってんの?私の家はもうちょっと先だよ。」
「え?さっき京子ちゃんの家の前にいたよね?俺、お義父さんに挨拶して、こっぴどく怒られて。」
「なに?それもデジャブ?挨拶はこれからだよ。」
「え~、なになになに?」
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