リセットボタン

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「まあ、そう言わずに。」  緊張のあまり冗談を言ったのかと思ったら割とマジだったので、京子は順平のことをちょっと気持ち悪いと思った。  そんな京子の軽蔑の視線を受け流し、順平はリセットボタンを頭上に掲げると、高らかな声とともに、ボタンを押した。 「リセットボタン!あ、それ、ポチッとな!」  世界がグニャっと曲がってシュッと消え、ポンと弾けて再生された。また少し前に時間が戻った。 「うっぷ。この気持ち悪さ、よし!戻った!」 「ちょっと、しっかりしてよ~・・。」 「しっかりカリカリ・カリビアン!」  京子が両手で大きなハートを作ろうとした瞬間、順平は素早い動きでハートを作り叫んでいた。京子は唖然とした。 「わ、私が昨日寝ないで考えたギャグを・・・。なぜ?」 「まあ、詳しい説明はあと。それより、俺、鼻毛出てない?」 「うん。ごっさ出てる。」  鼻毛の毛量表現がリセットされる前よりグレードアップしていた。 「抜こうか?」 「ちょっ!抜くのはやめて!」 「ええ?もう私の家に着いちゃうよ?」  ちょっと考えて、順平は京子に聞いた。 「京子ちゃん、鼻毛バサミ持ってない?」 「逆に聞くけど、順平は私が鼻毛バサミを持ち歩く人だと思ってたの?私、鼻毛が出ていたことある?」 「言い争いしている時間はないよ。なんか、ハサミ的なもの持ってない?」 「ちょっと!私のかばん、勝手にあさらないで!」  順平は京子のカバンを奪い取った。そして、カバンの中のものを道路にポイポイ放り投げながら、鼻毛切りバサミを探した。
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