2人が本棚に入れています
本棚に追加
ドンッ! という鈍い音。吹き飛ばされる体。
気付けば私はアスファルトの上に倒れ込んでいた。今までに感じたことのない、壮絶な痛みに全身が襲われる。……痛い。痛い。身体が痛くて動けない。
耳に残る急激なブレーキ音と、衝撃。
……ああそっか。私、轢かれたんだ。車に。
自分の状況を静かに把握する。口からはヒューヒューという変な音がして、まともに呼吸が出来なかった。まるで心臓がそこにあるかのようなどくどくとした頭の痛みに、脳がうまく働かない。
これ、結構ヤバイんじゃないのかな。
薄れていく意識の中、脳裏にはっきりと浮かんだのはずっとずっと大好きだった彼の横顔だった。
……あーあ。どうせ最期ならもう一度だけ会いたかったなぁ。今でも大好きな、私の初恋の人に。
「……ひ…………い……くん」
小さくその名を呟いて、私は意識を手放した。
最初のコメントを投稿しよう!