消えたのは、

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『お兄ちゃん、見つけた!』  突然そんな声が聞こえて、僕は思わず悲鳴を上げました。慌てて声の方に視線を向ければ、そこには目を丸くしたBちゃんが穴から覗き込んできていて。  気づいたら、いつの間にか静かな世界ではなくなっていました。車の音もするし、僕たち兄妹以外の声なんかも聞こえてくる。僕はそっと遊具の外に出ました。すると、Bちゃんが、『全然見つからないから、どこに行っちゃったのかと思った』って笑うんです。  思わず、僕は隠れる側だったっけって訊いたら、何言ってるんだって顔するんですね。『だから隠れてたんでしょ?』って言われたら、もうどう返していいのやら。大丈夫かと心配されてしまいました。なんでもないとしか言えなかったんですけど。  じゃあ次の鬼はお兄ちゃんだねって言われたんですが、もうかくれんぼは終わりにしようってことで、やめました。流石に、もう一度かくれんぼをする気にはなれなくて。あと、なかなかいい時間にもなってましたしね。昼頃に遊び始めたはずなんですが、いつの間にか、黄昏時になっていたんですよ。
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