消えたのは、

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 ――これは僕の実体験なんですが。  僕、実は五人兄弟の長男なんですよ。はい、一番上。弟が三人と妹が一人、三番目だけ女の子で。判りやすく、上からAくん、Bちゃん、Cくん、Dくん、ということにしますね。  それで、小さい頃からよく、下の子たちの面倒を見たりしていたんですけど、そう、僕がまだ子供の頃の話ですね、近所の公園に遊びに行ったんです。父と兄弟たちの六人で。この頃、Dくんはまだ赤ん坊で、その世話をいつもしている母親を休ませてあげようっていうのが目的だったので、母だけは家に残っていました。父がDくんを見ていて、僕たち他の子供は公園で遊んでいる、っていう感じでしたね。  追いかけっこしたり、ボール遊びしたり、公園の遊具で遊んだり、四人ではしゃいでいたんですけど。誰だったかな、Cくんだったかな。かくれんぼをしたいって言い出したんですよ。  特に文句もなく、じゃあかくれんぼしようか、ということになって。ええと……確か、二、三回目の鬼が僕だったんですね。  公園はそこそこ広いところで、遊具もそれなりにあって、植木とか、隠れられそうな場所が結構あったんです。まあそうは言っても所詮は小さい子供のやることなので、そこまで時間もかけずにBちゃんとCくんを見つけたんですよ。  でも、残りの一人がなかなか見つからなくて。Aくん、どうやらなかなか上手く隠れたみたいでしてね。先に見つけた二人に、ここにいてねってお願いして、もう一回探し回ったんですよ。  そうしたら、公衆トイレのところにいたんです。トイレの中に隠れるのは駄目だってルールにしたから、そこにいないという思い込みがあって、盲点だったんですね。まあ確かに中にまでは入っていなかったんですけど。外の、トイレの囲い? 塀? の奥に隠れてたんです。知恵が回る子でして……。  それで、これで全員だ、と思って、僕はAくんの手を引いて、他の二人のところに戻ったんです。  そうしたら、一人しか、Cくんしかいなかったんですよ。
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