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「成人式より人集まってるんじゃない?今日」
私の隣でシャンパングラスを片手に親友のナミが言った。
ナミも今夜は気合が入っているようで、華やかで品のあるパーティドレスを着ている。
「ん、まぁこんなに豪華な同窓会なら行ってもいいかなってなるんでしょ」
「そうかあ。にしても名村って本当にお金持ちだったのね。だって私たち3000円しか出てない」
そう言うナミの視線の先には、楽しそうに談笑している主催者の名村がいた。
先々週あたりに突然届いたハガキは、中学の同窓会の知らせだった。
同窓会といっても成人式からまだ4年しか経っていないが、今日の会場が東京湾のナイトクルーズだと聞けば成人式よりも人が集まっていた。
実際、私もナミもクルーザーに乗れるなら行こうと思った部分がある。
こうして周りを見渡してみると、外見はみんな変わったなあと思った。
オシャレも何もしない中学の頃に比べれば、当たり前なのだが。
「あ、あれ悠吾じゃない?」
ナミに肘で突っつかれると同時に、その名前にくっと息がつまった。
その瞬間に、私は何も変わっていないのかと実感してしまう。
そちらに目をやると、ナミの言う通り悠吾がいた。
成人式に彼は来ていない。
だから、直接姿を見るのは結構前になる。
遠くてあまりよく見えないが話す時に髪を触る仕草が "いつもの悠吾" そのもので.......、
一気に当時のことが浮かび上がってきた。
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