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クルーザーの外テラスは、案外涼しかった。
人が沢山いるとおもったけど、意外といない。
久しぶりに会って、急に話題なんて今の私には作れるはずもなく夜空を見上げるしかできなかった。
星が少し出ていて、大きめの月が光っている。
こんなに月を見つめることなんて中々ない。
「今、会社員?」
「え?.....あ、うんそうそうやっと慣れてきた感じ」
悠吾がいる横は向けなくて、完全に海に向かって答えていた。
「お前ネイルの人じゃなかったっけ笑」
「それはっ......無理やり考えたって言ったじゃん笑 全然わかんなくて!」
悠吾、覚えてるんだ。
将来就きたい仕事を調べる授業のこと。
「そんなこと言ったら悠吾だって、消防士じゃないの?」
「いや笑、だから無理やりだって言っただろ?記憶うっす!」
「ちょ、覚えてます〜っ!」
勢いで気づいたら悠吾の方を向いていた。
また目が合う。
でも、鼓動が速くなった私は目をそらして、無かったことにしてしまう。
まただ、と思った。
当時もそうだった。
クラスの中でいる時は散々話せて、ずっと2人で笑ってた。
ナミの言う通り、周りから見たら相当仲良く見えていたのかもしれない。
でも、こうして2人になってしまうと途端に何も出来なくなる。
クラスの中では出来てた目を合わせることすらも出来ない。
そして悠吾もそんなに話さなくなって、その度に胸が苦しくなっていた。
好きなんて到底言えなかった。
誰か好きな人いるの?とも怖くて聞けなかった。
今思えば、ひどく恋愛が下手だったのだ。
そんなことを繰り返して、中学を卒業して、お互いに別の高校に進学。
結局私は何も出来なくて、悠吾のことも何も知ることが出来なかったのだ。
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