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この少しのやり取りでイラにはわかる。イラでなくとも誰でもわかる。
アルは変なヤツだ、それもかなりの。
「僕、色んなΩとかαと会ってきました。でも、親以外の男性のΩに合うのははじめてなのですよ」
男性Ωは殆どいない。その事実は知っている。でも、αとΩの社会から切り離されて育ってきたから、イラにその実感はあまりない。
でも、たまにタイガと初めて出会ったような場があり、そこで好機の目を向けられまくった経験はある。
その社会で育ってきたであろうアルが言うのだから、本当に殆どいないのだろう。
「お友達、なれますか。僕たち。なれると嬉しいのです」
アルがとろけそうな笑みを浮かべる。出会ってすぐの人間と仲良くなれるか、と言いたくなったがグッと堪える。この笑顔を前には、あまり否定的なことは言えない。
「まあ、うん。アルは嫌なヤツではないしさ」
変なヤツだけど。という言葉は押し込んで、続ける。
「上手くやれるとは思う」
アルは両手でイラの手を包み込む。
「わぁい。じゃあたくさんお話ししましょーね。何が良いですか、何から話します?」
そのまま上下に腕を振られる。振り回される側のイラはたまったものではない。手をさりげなく振りほどこうと試みるが、案外強い。
一晩中、この変なΩに振り回されることになりそうだとイラはため息をついた。
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