5.束の間

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この少しのやり取りでイラにはわかる。イラでなくとも誰でもわかる。 アルは変なヤツだ、それもかなりの。 「僕、色んなΩとかαと会ってきました。でも、親以外の男性のΩに合うのははじめてなのですよ」 男性Ωは殆どいない。その事実は知っている。でも、αとΩの社会から切り離されて育ってきたから、イラにその実感はあまりない。 でも、たまにタイガと初めて出会ったような場があり、そこで好機の目を向けられまくった経験はある。 その社会で育ってきたであろうアルが言うのだから、本当に殆どいないのだろう。 「お友達、なれますか。僕たち。なれると嬉しいのです」 アルがとろけそうな笑みを浮かべる。出会ってすぐの人間と仲良くなれるか、と言いたくなったがグッと堪える。この笑顔を前には、あまり否定的なことは言えない。 「まあ、うん。アルは嫌なヤツではないしさ」 変なヤツだけど。という言葉は押し込んで、続ける。 「上手くやれるとは思う」 アルは両手でイラの手を包み込む。 「わぁい。じゃあたくさんお話ししましょーね。何が良いですか、何から話します?」 そのまま上下に腕を振られる。振り回される側のイラはたまったものではない。手をさりげなく振りほどこうと試みるが、案外強い。 一晩中、この変なΩに振り回されることになりそうだとイラはため息をついた。
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