女の子の話

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女の子の話

私とクーちゃんはずっと一緒だった。4歳の時、お母さんから貰った誕生日プレゼント。お父さんが死んで、私を一人で育ててくれたお母さん。フラフラになるくらいたくさん働いていて、幼いながらその大変さに気がついていた。だから、わがままなんて言わなかった。 そんな中、お母さんがくれた唯一のプレゼント。大切にしないはずがない。お母さんの代わりとして、一緒にしたいことをたくさんした。朝「おはよう」って起きて、「いただきます」って一緒にご飯を食べて、一緒におままごとをして、一緒にお風呂に入って、夜「おやすみ」って一緒の布団で寝る。 私が小学校に上がって、一緒にいる時間が減ってもたくさん話しかけた。学校の友達のこと。先生のこと。授業のこと。図書室で借りた本のこと。友達の好きな人のこと。自分もその人を好きになったこと。 クーちゃんは私の友達であり、何より大切な家族だった。 だからこそ、いつかのお母さんの言葉には腹が立った。「捨てようか」って。私が初めて出した大声に、お母さんはとても驚いていた。そのおかげか、小学校に上がっても特に言われることはなかった。 ……なのに。 今日、家に帰ると珍しくお母さんが家にいた。休みの日だったらしい。一緒にご飯を食べられることが嬉しくて、私は急いでランドセルを置きに部屋へと向かった。 ドアを開けると、そこにいるはずのクーちゃんが見当たらなかった。落ちたのかと棚の周りを探したがどこにもなかった。私が部屋を探していると、お母さんが部屋を覗きにきた。 「あぁ、あの子なら今日ゴミに出しちゃったよ。もうボロボロだったでしょ? また買ってあげるよ」 私は何も言わず、家を飛び出した。 クーちゃん、ごめんね。守ってあげられなくてごめんね。1人にしてごめんね。クーちゃんはいつも一緒に居てくれたのに。…クーちゃん。今、どこにいる? 迎えに行くから、待っててね。 私はあちこち探した。家の前のゴミ捨て場も、近くのマンションのゴミ捨て場も、公園の入り口も。思い当たるところは全部探した。 でも、どこにもクーちゃんはいなかった…。 大切な家族がいなくなって、私はどうすればいいのか分からなくなってしまった。力なく家へと帰っているとき、横からライトに照らされた。ドンッという強い衝撃に襲われ、気がつくと私は寝転がっていた。車に轢かれたんだと分かると、だんだん身体を痛みが襲いだした。意識も遠くなってきて、視界も狭くなっていった。 クー……ちゃん…。
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