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「佐倉さん、冷えちゃってない?ごめんね、寒いのに待たせて」
「全然大丈夫だってば」
苦笑する佐倉の顔色は、さっきより少し血色が良くなっていた。具合が悪くはなさそうな事に、ほっとする。
「こっちの都合で勝手に待ってたんだから、気にしないで……それより、平取さん、近々時間取れない?」
「え?」
「ちょっと、確認したい事が有るの」
確認、という言い方が気になった。だが、時間を取ってと頼まれたという事は、今聞く話では無いのだろう。
「良いですよ。……長い話?」
「そうでもない、かな」
短いのなら、空き時間が少なくとも何とかなるだろう。千都香はざっと頭の中で予定を確認した。
「明後日のお昼か、夜か……ちょっとなら、今日この後でも……先生のとこに寄らないといけないけど、それでも良ければ」
どうせ、清子の家に行く前に食事をしなくてはいけない。和史が来るなら壮介の食事の心配はしなくても良いし、多少の時間は取れるだろう。
「じゃあ、今日でお願いします。わざわざ集まる程でも無いし」
「そうなの?じゃあ、それで。終わった後またね」
千都香はそこで佐倉と分かれて、水を汲んだ。
佐倉の確認したい事とは、華也子と三人で話した時の何かだろう。
千都香が同席していた間に出た話か、その後に出た話か。
どちらにしても早く片を付けた方が、佐倉もだろうが、千都香も落ち着く。
「千都香先生、おはよう!」
「今日、千都ちゃんが水汲んでるの?先生は?」
「あ。おはようございます。今日から新しい器に入るんでしたっけ?……先生はお部屋の準備してます。私がトイレ行きたかったんで、押し付けられた訳じゃ無いですよ!」
千都香は顔を見せ始めた生徒たちに挨拶をしてわいわい話しながら、もうすぐ開始時間になる教室へと向かった。
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