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「陶芸家さんの、お仕事のお手伝い?」
清子は千都香の言ったことを復唱すると、紅茶を注いでいる麻と顔を見合わせた。
佐倉と分かれて、手土産に清子の好きな菓子を買って家を訪ねた。お互いの近況報告を終え、訪問の本題に入った所だ。
「ええ。憶えてませんか?以前先生のとこで会ってるんですけど……最初の頃、長内さんと一緒に」
「……ああ!あの、大っきなクマさんみたいな人?」
「そうです。あの人です」
清子にクマさんと言われた千都香は、思わず笑いそうになって、こらえた。
前に木村も毅のことを、クマに似ていると言っていたからだ。見た目は大きくてがっしりしているが温和、という印象は、世代を超えてクマのキャラクターを思わせるらしい。
「器を置いて貰ってるお店の担当者さんたちに、工房を見て貰って、新作を紹介したいんですって。独立してから、そういう事をしたいとずっと思っていたのに、忙しすぎて出来なかったそうで……一人じゃ無理だし、頼める人手のあても無かったから、って」
「……千都ちゃん?その人……」
「はい?」
おおよその説明を終えて紅茶を飲んだ千都香に、清子が何か言い掛けた。質問だろうか、と思ったが、途中で途切れたまま、続きが来ない。なのに清子は困った様に眉を寄せていて、麻の方を見たりしている。麻は相変わらずのポーカーフェイスだが、何も言わずに清子と目を見交わしていた。
「……あのー?……」
「あ。ごめんなさい、何でもないわ」
千都香が聞き返すと、清子は微笑んでカップを手に取り、一口紅茶を飲んだ。
「……あの……もしかして、そういう時に着物を着たりしたら、出しゃばり過ぎって思われるでしょうか……?」
そういう時に何を着たら良いのか分からなかったので、清子に相談したくて、やって来たのだ。
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