帰結

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 若い女性と言っても、浮付いた感じは全く無い。他の招待客も皆そうなのだが、落ち着いて居て品が良さそうだ。これも一種の類は友を呼ぶという事なのか、と千都香は感心しかけた……のだが、毅の友の壮介のだらけた姿が浮かんでしまって、危うく吹き出しそうになった。  壮介は確実に、今日のお客の「類」では無い。 「これ、宜しかったら……立岩先生にお渡しするより、平取さんにが良いですよね?」  本橋が、クリーム色の紙袋から細長い箱を取り出して、千都香の方に差し出した。 「あ!これ、美味しいお茶ですよね!」 「ご存知ですか?」 「はい。前に、つ……立岩さんに、りんごのお茶をご馳走になって。もしかして、あれも本橋さんが?」  千都香の言葉に、本橋の顔がほころんだ。 「ええ、それは前に差し上げたものだと思います。お気に召して下さってありがとうございます。あれは紅茶でしたけど、これは緑茶なんですよ」 「わあ、緑茶……!ありがとうございます!」  先日の紅茶から推測すると、緑茶も普通の緑茶ではない珍しい物なのだろう。千都香は心からの御礼を伝えながら、クリーム色の包みを受け取った。 「姿が見えないと思ったら、こんな所に」 「立岩先生」 「毅さん」  毅が大きな体を縮めて、台所との境目をくぐって入って来た。
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