帰結

65/93
前へ
/313ページ
次へ
  * 「おはようございます」 「……おはよう……」  次に毅が起きた時には、朝だった。  酔った後にしては珍しく、ぐっすり眠った。水を飲めだのトイレに行けだのと言われたのを守ったのが良かったのか、ずっとやりたかった会が無事終わってほっとしたのか、千都香が居るのが心地良かったのか。  毅は千都香に促されてシャワーを浴びて身支度を整え、居間に戻った。 「すみません。朝ご飯、勝手に作っちゃいました……簡単ですけど」 「うん、有り難う。いい匂いで目が覚めたから」  布団が片付けられて、テーブルに朝食が並んでいる。青菜と豆腐の味噌汁、目玉焼き、漬け物、リンゴ。  昨日一緒に運んだとは言え、毅が身支度をしている間に一人で布団を片付けて、朝食の場を整えるのは手間だっただろう。そう思うのだが、千都香には大変そうな素振りは、全く無かった。 「食べれます?二日酔い、大丈夫です?」 「全然大丈夫。昨日はそこまで飲んでないし、あと、千都香さんが面倒みてくれたお陰だな」  食べられそうなご飯の量を聞いて、千都香が茶碗によそってくれる。目玉焼きに何を掛けるかが偶然同じで、そんな事すら毅には顔がにやけてしまう程に嬉しい。 「私がしたのなんか、水飲んで下さいって言った位ですよ!それにしても、三日酔いだった時は、相当飲んだんですねー……」 「あれは、飲んだんじゃなくて飲まされたからなあ」  しかも途中から記憶も無い、とは言わなかった。その時の毅の言葉を誤解した華也子の流した噂が、千都香に迷惑を掛けた自覚が有るからだ。  毅としてはその噂の内容は、むしろ喜ばしいものだったのだが、真実では無かった事は確かだ。 「……旨い」  味噌汁を一口飲んで、自然に言葉が口からこぼれた。味噌の濃さが、ちょうど良い。出汁の風味もあまり鰹が勝ちすぎて居なくて、毅好みだった。 「ほんとに?良かったです」 「調味料とか有る場所分かった?」  冷蔵庫に仕舞ってあった物は別として、他は台所の棚や出窓の前に、ばらばらに置いてある。自分には使い慣れていても、千都香には分かりにくかっただろう。
/313ページ

最初のコメントを投稿しよう!

167人が本棚に入れています
本棚に追加