不在

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「はい?」  佐東麻は台所仕事で濡れた手を拭いてから、インターホンの応答ボタンを押した。  先程から、(せわ)しなく何度も鳴っている。よほどせっかちな来客かセールスの類いかと思ってモニターを見ると、鳴らしていたのは思いも寄らぬ人物だった。 「あらまあ!ご無沙汰してます、牧先生」 「お久し振りです」  この家の主である清子の金継ぎの師の牧壮介が、そこに居た。  応答は、壮介の挨拶でぷつりと途切れた。訪ねて来たのに、用件も告げない。壮介の様子は、どこかおかしかった。  開扉するので家に上がる様に促して、清子に壮介の来訪を伝え、二人で玄関に出迎えるや否や。 「……千都香は、お邪魔してないですか……」  壮介は憔悴(しょうすい)した顔で、そう呟いた。
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