不在

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「お前は昨日、俺の事を裏切った。……そう思うのは、仕方ないよな?」 「……ああ」 「殴りつけたい所だが、手は大切な道具だ。……お前にとっても、そうだよな?」 「……ああ……」 「付いて来い」  毅は(かまち)からたたきに下りると靴を履き、壮介の前を通り越した。そのまま外に出て、歩いて行く。壮介はそれに付いて行った。 「そこに立て」  毅は、立ち止まって壮介に命じた。  立て、と言われた場所は、畑らしき所だった。藁や土が混ざった物が山にして積んである、その手前だ。 「……ボディーチェックって、知ってるか?」 「身体検査か?」  毅は何やらストレッチをしながら、薄く笑った。 「フルコンタクトのスポーツの経験は?」 「フルコンタクト?空手か?」 「空手だけじゃない。それ以外にも、ラグビー、柔道、」 「柔道なら……体育の授業程度だが」 「そうか。…………それに、アメフト……他にも有るぞ、」 『君は、がっしりしているなあ。何かスポーツでもやってたの?』  毅が動いた瞬間に、大学入学後初めての自己紹介での恩師の言葉を思い出した。  と同時に体の前面に何事かと思うレベルの衝撃を受け、思い切り後ろに吹っ飛んだ。 「……アイスホッケーも、その一つだ」  壮介は意識が半分飛んだ状態で、そんな言葉を頭上に聞いた。
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