不在

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「……ガンガンに悪いことしたって思ってるなら尚のこと、千都ちゃんをちゃんと見つけなきゃ」  和史は、柔和に笑った。それは、慈愛に満ちた、と言っても良い様な笑顔だった。 「……ちゃんと見つけて、お互いに言えてない事を、ちゃんと言わないとな」 「……ああ」  千都香は壮介を手伝っていた時に、和史と二人で会っても良いかと聞いて来た事が何度か有った。  千都香が来る前に和史がやってくれていた、ホームページやネット関係の管理についての相談の為だ。しかし、その時に壮介の話や、何か悩み事を打ち明けたりもしていたのかもしれない。  和史の含みの有る言い方は壮介にそう思わせたが、嫌な感じはしなかった。むしろ心配して見守ってくれて、その結果として今は励ましてくれているのだろう、と思えたからだ。 「……それとさあ。良い機会だから、お前いい加減スマホにしなよね」 「何で今スマホの話だよ」  和史の友情に感謝していた壮介は、からかい半分に現実的な話を口にされて、ムッとした。  壮介は昔から、その類の機械を嫌っている。憎んでいると言っても良い。しかも、機械からも憎まれて、嫌われている。相思相愛ならぬ、相嫌相憎だ。 「あのさー。ガラケーの世界しか知らないお前には分かんないだろうけど、お前がスマホかパソコン使えたら、千都ちゃん探しはもっと楽だったと思うよ?」 「う」 「和史さん」  和史が壮介を凹ませると同時に、若々しい女性の声が、控え目に(かぶ)った。  
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