不在

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「……ありがとな。」  礼を言って、芋を摘まんだ。  ウーロン茶と芋を頼んだのは、酒を飲みたく無かったからだ。家で飲むならともかく、ここで飲んだらそのあと無事で帰れるかどうか、自信が無い。  珍しい。飲むのが怖いと思ったのは、壮介の二十年あまりの飲酒人生でも数える程しか無い。 『あー!また何も食べないで飲んでる!!なんでもいいから食べて下さい!肝臓壊しますよ、若くないんですから!』  芋を頼んだのは、千都香の影響も有った。  帰って来てくれと千都香に頼むには、千都香に負担を掛けない様に、今より少しましな自分になる努力だけはしてみようと思ったのだ。叱られた子ども並みの幼稚な発想だが、現実の行動が子ども並みなので、仕方ない。 「……ご注文は以上でお揃いですか?」 「ああ」 「……平取ちゃんは?」 「……は?」  壮介は呆気にとられて木村を見た。眉間に皺が寄っている。 「……ご注文の平取ちゃん、一昨日くらいから三週間休みを取ってるんですよ。事前にちゃんと申請して、シフトとかも調整してます」  三週間とは。思いのほか長い。 「理由は?なんか用が有るのか?」 「……休んでることも個人情報ですけど、理由はもっと個人情報……」  思わず尋ねた壮介に、木村の眉間の皺が深まった。
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