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「その辺は……前に一緒に来た、飲めないお友達に聞いてみて下さい」
「なんで岩だよ」
仕方のない事かも知れないが、自分の知らない事を毅が知っていると匂わされるのは忌々しい。壮介はムッとしながら、唐揚げを口に放り込んだ。
「お友達、前に一人で?いらしててー、なんか?話してましたよ、いと」
「いと?」
「……いとをかし?」
何故そこで古語なのだ。
「とにかく、とりあえず、お友達にどうぞー」
「……生憎、奴とは喧嘩中だ」
「えっ!?」
木村は目を見開いて声を上げた。仕事中とは思えない驚きっぷりだ。
「まさかっ……三角関係からの痴情のもつれで?!」
痴情とは何だ。一生使わない類いの言葉だ。
「そうじゃねえよ。嘘吐いて、怒らせた」
痴情はともかく三角云々の方は、そうだと言えるのかもしれない。毅の元に行ってしまえと言った千都香を、自分勝手に取り戻そうとしているのだから。だが、千都香が二股を掛けたかの様に取られる表現には、頷けない。
千都香は、全く悪くない。毅もだ。ほぼ百パーセント、壮介が悪い。
「喧嘩して、怒らせたんですかー……じゃあ、仲直り前に、引っ越しちゃうかー……」
「引っ越し?!」
「……あ。」
木村は、分かりやすく「しまった!」という顔をした。
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