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「……あれ?梨香姉は?」
愛香の高さに合わせる為に床に座り込んだ雪彦は、目の前のお節介で口うるさい生脚に尋ねた。
「買い出し?豆腐が絹ごしだった!って」
「別にいーのになあ、絹でも」
「いい!まなはやわらかいオトウフが好き!」
「だよなー?まなちんは、やーらかいオトーフが好きだよなー?うん、頬っぺもやらかーい!」
「きゃははは!ねー、ゆきにいは?わあ!ゆきにいの頬っぺは、かたーーい!!」
柔らかい豆腐だの柔らかい頬っぺだのと言いながら、従叔父と従姪がじゃれあっている。
愛香の父親の尚は、今日から三日間の出張だ。母親であり雪彦達の従姉である央子は、昨年亡くなっている。なので、尚が仕事で居ない時や遅い時、愛香はたいてい雪彦と梨香姉弟の住まいに泊まりに来る。城山宅なら、誰かは家に居られる可能性が高い。
「はいはい、仲良しで結構結構……ゆき?」
「なにー?」
けらけらと笑う愛香にシフォンケーキの箱を見せてもっと笑わせていた雪彦は、自分を呼ぶ声の方をでれっでれの笑顔で振り仰いだ。
「まなの髪、乾かしてあげて。」
「ゆきにい、かわかしてあげて!」
「畏まりました、ちぃ姉、まなちん姫」
雪彦は女性陣に恭しくお辞儀をしてドライヤーを受け取ると、愛香の髪のタオルを外した。
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