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「ちぃちゃん?」
「なあに、まな」
肉が無くなり、野菜が減った鍋に具と調味料を足しながら、千都香が答えた。千都香が居なければ梨香がやるところだが、手際は千都香の方が良い。
「ずっと、ここにいるの?」
「ずっと居るよ、ちぃちゃんは。」
千都香より速く、梨香が答える。
「梨香姉、私は」
「遠慮しないで、ずっと居ても良いんだよ?お願い、聞いてくれたんだし」
梨香に言われて、千都香は黙った。言ってる事はその通りだし、家主の言葉だ。愛香に聞かせて困る内容でもない。
「おねがい?」
「そう。お仕事変えてくれるなら、お家にずっと居て良いよーって、ちいちゃんと、約束したの」
「おしごと……ビールの?」
愛香は、残念そうに言った。「ビールのちぃちゃん」は、愛香の憧れなのだ。
愛香は尚と一緒に、何度かビヤホールに来たことが有る。その時、お洋服が可愛い!ちぃちゃんかっこいい!と大変な気に入り様で、自分もいつかここでお仕事したいとまで言っていたのだ。
「ううん。ビールじゃなくて……」
「……あ!えっ?!」
口籠もった千都香を見た愛香の目がきょろきょろと動いた後に、見開かれた。
「お星さまのおうち!?直すお仕事?」
「そう。」
「えーっ!!」
千都香の短い返事を聞いた愛香は、悲しそうな顔になった。
「まな、名人に会いたかったぁ!!」
「ぶっ」
雪彦が、愛香の言葉でむせかけた。
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