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「……泣いてる……?」
呆然と呟かれ、雪彦は頭に血が上った。
「はぁ?泣いてますよ?!泣いてるし外に出ねーし食わねーし、今日だって、寝込んでるし!!」
「……食わないで、寝込んでる……」
「ちぃ姉があんなになるなんて、あんた、何したの?会社辞めさせて自分とこでこき使って、顔とか手とかあんなに腫れ上がらせて、お終いには首にしてちぃ姉のこと捨てて、なんで今更訪ねて来たの?」
「……頼みが有る」
それまでは雪彦が口にした千都香の様子を繰り返していただけだった「先生」は、不意に雪彦に頭を下げた。
「千都香がどこに居るのか、教えてくれないか?」
「は?!無理!!あんた人の話聞いてねーの?!」
「……なら、せめて会わせてくれ。一度で良いから」
「あんた頭おかしいの?本人が会いたいって言ってねーのに、会わせる訳ねーだろ!?」
「……俺のせいで泣いてるんなら、泣きやませられるのも、俺なんじゃねぇのか」
「っキモっ!!!!」
雪彦は立ち上がると、「先生」を見下ろして吐き捨てた。
「それ、ストーカーの発想だよ?通報するよ!」
「キモくても、ストーカーでも、通報されても構わない。千都香に会って、話がしたい。話して、謝りたい事が有る」
聞く耳持たないとは、この事か。こいつは、どうしてこんなにしつこいのだろう。
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