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「はぁああっ?!何言ってんだあんた!?」
千都香の代わりに雪彦が、店に不似合いな音量と内容で叫んだ。
「俺はっ、あんたが謝りたいっつったから、ちぃ姉に会わせてやっただけなんだけど?!」
「ああ、感謝してる。お陰で謝る事が出来た。有り難う」
「ありがとうじゃねぇよ!!だれが結婚申し込めって言ったよ?!」
「……ああ。俺はどう見ても、結婚向きじゃ無いからな。断られる事は覚悟の上だが、」
壮介は雪彦から視線を移して、千都香を見た。
「お腹の子に、父親は必要だろ」
「え」
「ぅぇええええええっ?!」
今度こそ絶対に空耳だと、千都香は思った。
しかし、空耳にしてはおかしい。雪彦も、千都香と同様に驚いている。
「……えっと……その……」
驚きのピークを越えたらしい雪彦が、わなわな震えながら口を開いた。
「……ちぃ姉っ……妊娠っ……」
「ばかっ!!してないっ!!」
「しただろうが。」
「っ?!」
雪彦に誤解されただけでも充分過ぎるほど恥ずかしいというのに、壮介に真顔で言われて、千都香はキレた。
「ばかばかばかぁあっ!!妊娠はしてないって意味に決まってるでしょぉおおっっ!!」
「したのか……したんだ……」
「してないのか……」
男二人は、片や呆然と、片や残念そうに、正反対の事を口にした。どちらも正しいのが、ややこしい。
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