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「……二人ともっ……最っ、悪っ……」
従弟には致した事を知られてしまい、致した相手には妊娠したと思い込まれていた。それだけならまだしも、どちらもそれをあからさまに千都香の前で話題にしている。
……こういうのは、何ハラスメントと言うのだろうか。今までの人生でこんなに恥ずかしい目に遭った事が無いので分からないが、これ以上の恥辱は拒否したい。
「そこどいて。帰るから」
「無理だ。」
帰るには、壮介が邪魔だった。
扉の前に立ち塞がっていた先程から、ずっと邪魔では有ったのだ。千都香との距離が詰まった今は、更に邪魔だ。身長差も手伝って、目の前を塞ぐ壁感とか威圧感がものすごい。
「無理って、何っ?!無理じゃないでしょ?そこ、どいてっ!」
「無理なもんは無理だ。まだ帰るな」
「なんで?!」
「話がまだ終わってない」
「私は、最初から話なんか有りませんっ!帰りま」
「千都香」
不意に、手を握られた。
直接。じかに。生で。素手で。
これもまた、今まではほぼ無かった事だ。壮介が漆を扱う手で千都香に触った事など、アレルギーを発症してからは数える程しか無い。
「一緒になってくれないか」
……何度目だ。
唖然としている千都香の耳に、聞き憶えの有りすぎる内容の空耳が聞こえた。
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