167人が本棚に入れています
本棚に追加
「俺らは普通の従姉弟じゃないよ?おばちゃんたち──ちぃ姉の両親は、あんたが実際に会うより先に、俺らに聞いて来ると思うよ。どういう奴か知ってるか、って」
「ゆきっ!?」
千都香は思わず振り向いて、壮介から身を離した。
雪彦の言うことは、おそらく正しい。央子が結婚する前も、両親より先に従姉妹たちに尚の事を紹介して、宜しく頼むと根回ししていた。
壮介の事をちゃんと見て、千都香の話を聞いてくれれば、分かって貰える話だとは思う。
しかし、その前に雪彦や梨香に悪条件ばかりを並べ立てられたら、会う事はおろか、聞く耳すら持って貰えないかもしれない。
「千都香。落ち着け」
「だって、」
「大丈夫だ。ゆき君は好意で教えてくれたんだから」
「え?」
違ぇし、とそっぽを向いた雪彦に、壮介は頭を下げた。
「ありがとな。それも含めて考えた上で、一緒になるって決めたんだ。……全部、どうにかする」
「あっそ!」
雪彦は扉に手を掛けた。
「じゃあね、ちぃ姉。梨香姉には、てきとーに言っとくから……あ、すみません」
「いえ……失礼致します」
雪彦が扉から出ると、入れ替わりに店員が現れた。
「……お部屋のラストオーダーのお時間ですが、ご注文はお有りですか?」
もうそんなに時間が経ったのか、と千都香は驚いた。
最初のコメントを投稿しよう!