一途さの功罪

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「アレルギー向けの対策を、試すんだよな?だからこんなに荷物持って来てんだろ」 「はあ……それは、そうです……」  だからと言って納戸で着替えろというのは、物語の意地悪な継母の様だ。しぶしぶ納戸に入った千都香は、目を見張った。 「えっ?!……え、なんでこんなに床が見えてるのっ?!」  千都香の知っている納戸は、物置だった。納戸、と呼んではいるものの、元は単なる玄関脇の小部屋だ。そこに壮介が様々な物を置いていて、座る場所さえ無かった筈だ。 「不要品を捨てて、片付けた。手伝いも来たしな」 「お手伝い……長内さんとか?!」 「和史も、来た事は来たが……一番働いたのは、岩だ」  毅は千都香の休みの事情のあらましを聞いて、壮介に、「千都香さんがまた来るんだったら、ちゃんと千都香さんの休める部屋を作れ」と主張したのだ。  確かに、漆と接しないで過ごせる空間が有る方が、千都香には都合が良いだろう。壮介は、毅の案を取り入れる事にした。……とは言え和史に言わせると、「ガンガンは千都ちゃんが漆と接するのが心配なんじゃなくて、壮介と接するのが心配なんだよねー」と言う事らしかった。真偽の程は、定かではない。 「ここに荷物置いたり、休んだり、着替えたりしろ。作業場よりは、漆の成分は来ねぇだろ」 「……お気遣い、ありがとうございますっ……」  千都香は、感激していた。自分のせいで迷惑を掛けてしまったのには、アレルギーでもなるべく辛くなく働きやすい環境をと、皆が考えてくれている。 「ここで、対策とやらの格好になって、見せてみろ。作業場に入るのは、それからだ」 「分かりました」  千都香はそう言って頷くと、バッグのファスナーを開け始めた。
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