一途さの功罪

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「酷いっ!!見た目については、聞いてませんっ!!」 「悪ぃ悪ぃ。あまりにも、不審者っぽかったもんで……とりあえず、良いんじゃねぇか?それでダメなら、アレだしな」 「……先生……?」 「あん?」  それでダメならクビだ、と言うだけで千都香に泣かれそうなので、気を使って遠回しに言ったのだが。 「……それとか、あれとかって……もう、物の名前が思い出せなくなって来たんですか?」 「違ぇわ!!!!」  壮介は思わず千都香の頭を叩こうとして、寸前で止めた。 「……え?」 「……待ってろ。」  壮介は懐から手拭いを出して、千都香の頭にぱさっと乗せた。それから、おもむろに頭の上にぽんと手を乗せて、くしゃくしゃっと髪をかき混ぜた。 「……言っとくけどな。お前に触ると俺までどうにかなっちまう、って思ってやってる訳じゃねぇぞ」  くしゃくしゃにされている千都香は無言だ。 「俺は普段素手で作業する。気を付けては居ても、どこかに漆が付いてるかもしれねえ。だから、俺は今日から、自分に漆が着いているかもしれない時は、お前に直接触らない」  千都香はまだ、何も言わなかった。 「……自分が汚ぇもん扱いされてるみたいで嫌だろうが……お前のアレルギーを防ぐ為だけの為に、俺が手袋をする事は出来ない。お前達には漆かぶれの対策として絶対しろと言ってるが、手袋をすれば感覚は鈍る。自分はしなくて平気だと知っているのにそんな理由で手袋をすれば、仕事を舐めてるって事になる」 「……よく分かりました。」  ぼそりと呟く声が聞こえた。 「おっしゃる事は、当然です。他にも条件を付けてくださって、構いません」  千都香は、顔を上げて壮介を見た。  その目には、涙は無かった。 「私が漆かぶれが出るかどうか試すのと同じように、先生も私を、試して下さい──これからも、アシスタントとして、使えるかどうか」  
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