第1章 言霊《ことだま》使い

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第1章 言霊《ことだま》使い

クッチャベール・ホーンマニーナ これがクッチャベールさんの名前。 近くの学校に通う17才、金髪の女性です。 クリクリとした青い瞳がなかなか可愛らしい。 中世とはいかないまでも、まだ妖精とか魔法使いとか魔物が細々と生きている時代の話です。 しかし舞台は欧米ではありません。『日本』なのです。 ここは『ナスノガハラ』と呼ばれる山間の平野。 なんにもない、ただの野原でしたが、人々は土地をならし、水を引き、道を作りました。 今では小さいながらも町ができ、商店が建ち並び、学校や病院、公園まであります。 その町の中にある洋館に、両親と妹と一緒にクッチャベールさんは住んでいます。 「お父様、今日はどちらへ?」 朝食後の紅茶を出しながらクッチャベールさんは尋ねました。 「今日はミブという町に『猫』の様子を見に行かねばならん。」 父親は紅茶のカップを手にして答えました。 「あの『化け猫』ですか?」 父親の右隣にいる母親が言いました。 「ああ。時々見に行かねばな。石に封じ込めてあるものの、奴は死んだ訳では無い。また悪さをしないとは限らん。」 「気をつけて下さいね。なかなかの力と聞いております。」 「うん、油断は禁物だ。準備は怠らん。」 …そう、クッチャベールさんのお父様は『物の怪の番人』なのです。
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