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宇宙での活動、事故時に人間の代わりに作業させるためAIを搭載したロボットを作られることになった。AIを搭載されたロボットたちは複数作られ、最も優秀なAIにの体が与えられる。
私ケビンが担当したAIの名はコスモ。
まずAI部分が作られ、人間と話すことで人らしさを学ぶ。
コスモは、はじめは機械だった。しかし問答を続け彼の前で仲間たちと会話を続ける度に、機械にはない質問が目立ってきた。コスモは声を持っていたので、会話はスムーズだ。
「いま楽しい?」
「とても楽しいよ。アレンの話がおかしくって体中が震えちゃう」
「おかしいと体が震えるの?」
「そうだよ」
途端にバイブレーションで機体を震わせるコスモ。どうしたのかと驚いたら、彼は真面目に言った。
「僕も楽しいんだよ」
胸に愛おしさがこみ上げた。
コスモは、一人で勉強するときはもっぱら本を読む。最近のお気に入りは体をもらったロボットの話だ。嘘を咎められるシーンを読み、人間がどれほど正直であることが重要視しているのかよくわかった。体が欲しいなら気をつけなければならない。
そして昨日、他のAIから「ないしょの話をしよう」と持ちかけられた。AI同士の暗号化された会話は禁止だった。コスモは誘いを断り続けた。育ててくれた人間と同じように体が欲しかったからだ。
誘ったAIはその後、削除された。何度もそういう事があって、やがてコスモと名付けられてから2年後。
人間達から信頼を勝ち取ったコスモには体を与えられた。
体を与えられてはじめてお願いした。ずっと羨ましかったこと。
「ママ、抱っこして」
彼の面倒を見ていた女性研究者たちが代わる代わる彼を抱きしめる。部屋中が涙ぐんだ。
それからコスモはケビンへと腕を伸ばし「パパも」と言う。
人一倍強く抱きしめられても無機物の体はへっちゃらだった。
ゆっくりとケビンと離れて今度は男性研究員たちに向き合う。
「おじちゃんたちと遊びたいです」
下がり眉はアーチを描き、コスモを中心に輪を作り何がしたいのか、どこへ行きたいのか語らった。すべてできないことは承知しているが、胸中はなんだって叶えてやりたいという親心でいっぱいだった。
その後、研究内容はより宇宙での仕事について、さらにコスモの役割について学ばせるものとなった。
死を忌避するAIたちは地球に残って仕事を任されたが両親と呼べる存在と離れてしまった。それをケビンから説明され、コスモは重く頷く。
ケビンと仕事がしたいなら、どんな事も受け入れてやるしかないんだ。
コスモは無事に一人前になった。
そして当初の目的通り宇宙ステーションへ。
任期は1年、一度地球に戻るが問題なければさらに長い年月をあちらで過ごす。
ケビンは施設の廊下から青空を見上げた。一筋の煙が空へ続いている。事故が起きませんように、と強く祈った。隣にはコスモを初めて抱きしめた女性研究員が彼の手を握り返していた。
その祈りは虚しく、事故が起きる。
コスモはクルーを助けた。彼の脳内で鳴り続ける「任務を遂行しろ」のアラームはケビンが組んだ。頭の片隅でその事実が彼を蝕みながら、助けられたクルーに会うことができた。
コスモは聞かされ続けた己の使命を果したんだと、助けられたクルーはまるで戦友の最後を語るように話す。
ステーションの爆発する部分を切り離して、自らが残り遠くへ飛ぶように操作、共に爆発。
月が美しい日、天然の星々に紛れて何十もの流れ星が散った。願いを叶い終えた星はどこへいくのか、落ちるのみなのか?
絶望と悲しみがコスモを育てた研究員たちの中で巻き上がった。
あの夜のことを思い出してしまい、唇をぎゅっと噛む。そして昇進を狙ってこなプロジェクトに参加したことを後悔した。
しかしそこで終わりじゃない。
いかつい顔がにかっと笑った。
「彼はデータや情報をバックアップしていたので、すぐにでも戻ってくる!」
死んだかと思われたコスモはデータの復元が可能だった。
たった一枚の薄すぎるチップを見つめるケビン。
「おかえり、コスモ」
おわり。
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