「ウチに来なよ! お隣だしねッ!」
そんなの子供の独断で決められるわけない。しかし無茶ぶりにも等しい提案を彼女の家族は快く承諾してくれた。ひとえにウチの両親と仲が良かったからだと思うが。
「でも……」
確かに小学生が一人で家にいるのは心細い。だからと言って、彼女達の厚意に甘えるのは図々しい事この上ないだろう。
「ハイッ決まりね! 明日からよろしくッ!」
決めあぐねる倫花を見かねたのか、彼女は有無を言わさぬ勢いで決定を促した。強引な娘に対して二人は微笑まし気な顔を浮かべている。口を挟まないのは居候に肯定的だという見解で良いのだろうか。
「せ、せめて……寝る時は自分の家でいいですか……?」
やはり迷惑をかけるわけにはいかない。かと言って、今さら申し入れを無下にできる空気でもないし。家の風通しも必要だろう。「えー」と不満げに口を尖らせる幼馴染を無視して二人に向き合う。
「判断は君に任せるからね」
「寂しくなったらいつでもおいで」
両親の穏やかな口調が、自然と倫花の頬を緩ませる。こんなに温かい気持ちになったのは初めてだ。
「ありがとうございます」
彼女は深々と首を垂らした。以降、両家との親睦は深まっていったと思う。
現在、倫花には血のつながった家族はいない。だが、血の交流は存在している。それを教えてくれたのは紛れもない、この少女なのだと気付いたのは彼女がこの世から去った後だった。
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