同性愛者

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「ごめんなさい。私が悪かったわ」  ふふん、と。幼馴染は控えめな胸を張って答えた。「分かればいいのよ」  歳を重ねるたびに幼馴染が口うるさくなっていく、なんて言ったらどんな目にあわされるか想像がつかないし、それが彼女の良さのひとつでもあると思っている。  そんな明朗快活な彼女だからこそ、倫花は惹かれたし孤立せずに済んだのだ。  倫花が両親と一緒にいた時間はたった九年。実父は通り魔に刺され、搬送された病院で死去。その知らせを受けた実母は病院へ向かう途中、うたた寝する運転手が使役する軽トラに跳ねられて即死。  当時は事の重大さをあまり理解できていなかったが、果たして半日で両親を失った小学生が世の中でどれほど存在するだろうか。この事件は瞬く間にマスコミの餌にされて全国に報道された。  テレビやら新聞やらで眺めた人々の反応は千差万別だが、掘り下げてたどり着く皆の結論は「運が悪かった」で済まされる。誰だってそうだ。他人の不幸は〝不運〟としか言いようがない。今回その対象が自分達だった、ただそれだけの事。  祖父や祖母も、倫花が二歳の時に他界しているため、血縁は途絶え一人ぼっちになったものだと思っていた。  そんな彼女に手を差し伸べてくれたのが他でもない幼馴染だった。
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