現在、時刻は午後九時を回っている。時間帯からして院内は静寂に限りなく近い。
いたたまれない空気の中で「ひとまず、家に戻りましょう……」と、話を切り出したのは意外にも泣き崩れていた義母だった。「そうだな」と義父も同意を示し立ち上がる。
くしゃくしゃに泣き腫らした義母の顔と焦燥のいろを浮かべた義父を見ていると罪悪感が強まっていく。
「私、ここに残ります」
だから二人の提案を無下にして居残る事を決意した。例え、反対されても頑なに自分の意思を貫き通すつもりでいた。
「……そうか」義父は穏やかに言った。「私達も明日お見舞いに来るからね」
「はい……」
一切の否定をせず気持ちを汲み取ってくれた二人を見送りながら院内のソファーで夜を明かした。寝心地の是非など言うまでもないだろう。何せ、こんな心境で眠れるわけないのだから。
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