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思い出した。夢ならばどれだけ良かったか。この記憶は紛うことなく現実に起こったものだ。散々、滓液を身体はもちろん口や膣内にも注がれた。あの晩、私は連中の自慰玩具に仕立て上げられたのだ。
「ぅぐッ…………おぇぇぇ!」
生暖かい汚濁の温度と感触を思い出した彼女は、逆流する酸っぱい臭いを抑えられずそのままベッドに吐瀉した。吐き出した汚物には昨日の昼食の米粒がいくつか混じっている。
なお、収まりそうにない吐き気。悠長に看護師を呼んでいる余裕もない。そうして彼女は病室から抜けると、重い足取りでトイレへ駆け込んだ。
ボタボタボタ、と。不快な音が深夜のトイレに響き渡る。そうして便器と睨み合う事、数十分。胃液しか出なくなった以上、籠っているだけ時間の無駄だと判断した彼女は自室へ戻ろうとする。
「ひどい顔……」
洗面所の鏡の中にいる自分を検めてみて密かに呟いた。かつて艶やかだった黒髪はすっかりボサボサに跳ねており、蒼白した肌と浮き出る頬骨も相俟って、みすぼらしく痩せこけている。
「どうでもいいか……」
私は嘆息を吐いてトイレを後にした。
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