出刃包丁

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 この階のトイレの傍にはナースステーションが設けられている。そのせいか、ぼそぼそと話す看護師達の会話が聞こえてきた。 「検査結果なんだけど……」 「どうでした?」 ――結果? 「気の毒な事にね……」 「ふむ」  深刻な口調。 「孕んでいるらしいのよ」 「うっわ……」 ――孕む? 誰の事を言っているんだ。 「二〇四号室の女の子」  聞き間違いだと思った。そうであってほしいと切実に思った。しかし自分の名前が何度も登場する以上、かつてない絶望が私の身体を蝕んだ。 「う……そ……」  私は膝から崩れ落ちた。しばらく動けなかった。あの五人の誰の子種を宿しているのか分からないが、これだけは言える。  奴らのうち、誰が該当しても汚物には変わりないという事実。さながら、当たりのないルーレットと言ったところか。
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