弔いの火柱

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 後悔と自責の念に憂いているというにもかかわらず、思わず声を張り上げてしまった。  彼女――高藤舞奈が今、こうして目の前に立っている事がよほど衝撃的だった。  それに一ノ宮達が密かに開発を続けていた〝情欲汚染計画〟にも詳しいようだし。  一体、この女の実態は何者なのだろうか。 「あー違う違う」  高藤は手を振りながら否定した。 「……なにが」 「舞奈は偽名。本当の名前は成山智鶴(なるやま ちづる)っていうの」 「成山……」  その名前を聞いた途端、倫花の顔が僅かに強張った。 「そ。私は成山智里の姉よ」  当時の事件は鮮明に憶えている。  成山智里――強姦されたショックで自殺した少女。当時、彼女は地方営業を生業としていた〝リ☆アライズ〟というグループで学生とアイドルの二足の草鞋を履いて活動していた。  立て続けに同僚が被害に遭い、現在グループは活動停止状態が続いている。少なくとも彼女達は必死でトップアイドルを目指していたに違いない。  もちろん私利私欲のために彼女らの夢と処女を剥奪した主謀者は殺している。が、どれだけ強姦魔を駆除しようと未遂で止められる確率は限りなく〇に近く、大抵が事後である。相手のいかれた心理が読み取れない自分を酷く恨む毎日だ。 「……すまない」  助けられなかったことを悔いているためか、自然と謝罪の言葉が口から零れ落ちる。相手が親族ならば尚更だ。  しかしその言動に高藤――成山千鶴は不思議そうに首を傾げた。 「なんで謝るの?」 「それは……」 「当然、私もアンタと同じ気持ち。どうせならこの手で屠ってやりたかった」 「……」 「だけど」成山は真剣な面持ちできっぱりと告げた。「自殺を選んだのはあくまで妹本人よ」  その言葉に対して倫花はカチンッときたのか声を張り上げた。 「違う! アンタの妹は奴らに殺されたんだ!」
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