二人の帰り道

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お題【時間をまきもどす力】【バラって漢字で書ける?】 住宅街の中を二人組が歩いて行く。 お揃いの紺色の上下に赤いリボンとネクタイ。カバンと、球技系のポール入れるやつ。キーホルダーは遠足っぽいのをお揃いで。同じような背丈でいて、体型だけ少し違ったりして。 そんな二人組だ。カップルのようにも見える。 大きな荷物を持ちながら歩いているのを見ると学生だろうか? 空も薄暗くなっているから部活の帰りだろう。季節柄薄暗くなりだした道を街灯が照らす。二人の影は次々へと移っていく。 野良の黒猫が二人を追い越した。 二人はずっと話すというのではなくお互いにポツポツと話ては少し赤くなったりむくれたりしている。 当たり障りのないような話の中で少女の方が内緒話をするようなポーズを取ってこっそりと言う。 「私、時間を巻き戻すことができるの」 その後しばらく沈黙が二人を包む。少女はなんちゃってとも冗談だとも言わない。それどころか静かに微笑んでいる。年相応の顔立ちはしかし、年以上のような表情をしていた。 いつのまにか二人の歩みは止まっている。 「え?」 ようやく少年が聞き返すようにする。先ほどまでの心地よい間とは違ってどちらかといえばリアクションの仕方がわからなかったような妙な間だった。 「信じてないでしょ」 こくりと頷く。少女はどうすれば信じてくれるかな……、としばらく考えてぽつぽつと言う。 「私に適当な質問してみて」 三秒ほど経って答えられなさそうなやつ、と付け足す。 少年はしばらくなんでまたそんなことを言い出したのかと考えていたが、少女があまりにも自信ありげにニヤついていたのでそれじゃあとスマホで何か調べる。フリック入力で2回と変換したような動きがいっかい。 そしてこちらもまた黒い髪までピシッと立ったように自信満々で問いかける。 「バラって漢字で書ける?」 少女は即座に答える。 「わからないね」 自信ありげな顔に反して回答は実にあっさりとしたものだった。まあそれは答えられそうなやつなんて条件をつけた時点で仕方ないのかもしれないけど。 「えー、それじゃあどうやって時間を巻き戻せるって証明するのさ」 少年の方は自信満々な顔があっという間に崩れる。 「だから、君が漢字を教えて」 少女は何かわかっているようだが、少年には何もわからない。 とりあえず断る理由もなく少年はスマホにもう一度打ち込み画面を見せる。少女は自分の手帳に打ち込んでよし、と言った。 「オーケー。時間を巻き戻せばその時の私は覚えていられるはずだ」 なるほど、と少年は呟いた。 「今から巻き戻すね」 少女がタイムスリップをするかと言うその時に少年は気づく。 「ちょ僕は覚えてないじゃん」 残念ながら少年の声は途中で途絶えた。 住宅街の中を二人組が歩いて行く。 お揃いの紺色の上下に赤いリボンとネクタイ。カバンと、球技系のポール入れるやつ。同じような背丈でいて、体型だけ少し違ったりして。 大きな荷物を持ちながら歩いているのを見ると学生だろうか? 空も薄暗くなっているから部活の帰りだろう。季節柄薄暗くなりだした道を街灯が照らす。二人の影は次々へと移っていく。 野良の黒猫が二人を追い越した。 ずっと話すというのではなくお互いにポツポツと話ては少し赤くなったりむくれたりしている。 当たり障りのないような話の中で少女の方が内緒話をするようなポーズを取ってこっそりと言う。 「私、時間を巻き戻すことができるの」 その後しばらく沈黙が二人を包む。少女はなんちゃってとも冗談だとも言わない。それどころか静かに微笑んでいる。年相応の顔立ちはしかし、年以上のような表情をしていた。 いつのまにか二人の歩みは止まっている。 「え?」 ようやく少年が聞き返すようにする。先ほどまでの心地よい間とは違ってどちらかといえばリアクションの仕方がわからなかったような妙な間だった。 「信じてないでしょ」 こくりと頷く。少女はどうすれば信じてくれるかな……、としばらく考えてぽつぽつと言う。 「私に適当な質問してみて」 三秒ほど経って答えられなさそうなやつ、と付け足す。 少年はしばらくなんでまたそんなことを言い出したのかと考えていたが、少女があまりにも自信ありげにニヤついていたのでそれじゃあとスマホで何か調べる。フリック入力で2回と変換したような動きがいっかい。 そしてこちらもまた黒い髪までピシッと立ったように自信満々で問いかける。 「バラって漢字で書ける?」 少女は即座に答える。 「薔薇でしょ」 ご丁寧に空中に文字まで書いた。書き順まで含めても正解。小鼻を膨らましたようなドヤ顔は癪に触るが、何回見ても正解である。 「君が書けるわけない……まさか偽物?」 頬を掴んでムニムニと引っ張ってみても、何かが起こることはない。 「だから時間を巻き戻したんだって」 少女は必死に説明するがいくら説明したとしても少年に覚えてもいないことは分かるわけがない。 「戻したのかわかんないよ」 少年はパッチリとした目を疑い深そうに少女に向ける。少女ははほんとうだよ、とむくれたように言ってから、 「でもわからなくていいよ」 と少しだけ寂しそうに言いました。 そして顔を作り直していたずらっぽく笑います。 「大事なのは私にコンビニで奢ってくれること」 しれっとそのまま少年の腕を組んで連れて行く。通学路の道沿いのコンビニまで引きずっていこうという魂胆だ。 「ちょ、そんな約束してないって」 「したから。誤魔化さないでね」 少年の必死な抵抗も虚しい。 これ当てられたらコンビニでお菓子おごるよ、と少年の口真似までして。 その間に抜け出せたが、お財布の入ったカバンはまだ少女の手元にある。 何にしようかな、と少女はコンビニへ向かって駆け出す。少年はその後をついていくのであった。
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