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飛鳥は余程手放したくないのか、ブーブーと否定的な意見を飛ばす。
「ない文字は元々ないのがほとんどなんだろうけど、今回みたいに誰かに掴まって消えてしまったものもあるのかもしれん。だから、尚更逃がしてやらないと」
「大丈夫だって、にーちゃん。多分、あんまり使われてない文字だったんだよ。だって、ネットで調べても全然■ニックとか起きてないし」
「ほら、今何か変だったぞ。使おうとしたんじゃないか?」
「気にしない気にしない。『混乱』って置き換えればいいだけじゃん」
まあ、確かにニュースをつけてみても混乱は起きていないようだ。俺と飛鳥が違和感を覚えることができているのは、もしかすると現物の近くにいるからなのかもしれない。
利用頻度が低いのではという飛鳥の意見には賛同できる。実際、辞書や新聞を見てもコイツと思われる文字は使われている文章はあまり出てこなかったし。だからといって、なくてもいい理由にはならないのだが。
飛鳥を納得させるには、それなりの理由が必要だ。単純な説得だけで妹は折れない。何かこう、■ンチの利いた方法でないと……ほら、何やかんやで使う。早いとこあの文字を救い出さないと。
「……そう。しりとりだ!」
兄の妙案に、妹は小首を傾げる。
「しりとりは最後に『ん』がつくと負けだろ? でも今のままじゃ半濁点付きの……呼びにくいから、『は』に『丸』で『ハマル』って呼ぶぞ。ハマルが最後につく言葉でも負けになってしまう。それじゃ駄目だろ?」
我ながら、小学生を説得するにはいい例だと思った。しかし、飛鳥は折れない。
「じゃあ、『ん』はセーフでハマルだけアウトにすればいーじゃん!」
「何言ってんだ。『ん』で始まる言葉なんてないだろ」
「ふふーん。ンジャメナっていう、何処かの首都の名前があるんだよ!」
「なら、『ん』がセーフでしりとりやってみよう。俺から行くぞ? メロン」
「ンジャメナ!」
「ナン」
「ん……ん~……」
「というわけで、このルールなら『ん攻め』で瞬殺だ。ハマルだけアウトってルールにはできない」
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