01.セフレならぬキスフレンドってやつ

13/18

183人が本棚に入れています
本棚に追加
/48ページ
「そ、そういうわけでは……ない、けど……」 そして私も本当にバカ! 嫌を嫌と言えないし、強く突っぱねることもできないし。 「そう……俺も。……あ、あれは。写真撮るやつ」 「写真? ……え、もしかして、プリクラ?」 「うん」 「えっ」 星風くんがプリクラなんて珍しい。 写真を撮られることも嫌いなので、こんな関係でありながら、実は一枚も二人で写った写真を持っていない。 「でもいいの? 星風くん写真は……」 「……山加となら」 「どっ、どうしたの? お店、女の子ばっかりだよ!?」 「山加となら別に……」 「ものすごく目が大きく写るよ!? 肌とか顎とかもシュ!って感じになっちゃうよ!?」 星風くんなら、私を含めたそこいらの女子よりも美人に写っちゃうだろう。 見てみたい興味と、女子としてそこはやめておいた方がいいという葛藤がせめぎ合う、 「まぁ、山加となら……」 「……………っ」 (嗚呼、もうっ!!!) 星風くんは天然120%で、無自覚でそう言ってるに過ぎないだろう。 山加と、山加となら、って、無自覚で! 嬉しすぎる無自覚に、鼻の穴がうにょうにょと広がってしまいそうな喜びを、どうにか奥歯で噛みしめて、私は結局、星風くんと写真を撮りたい欲に勝てなかった。 (冥土の土産って……ことで!) 自分に言い訳し、星風くんとゲームセンターの一角を目指した。 平日の放課後、女子高生、女子中学生たちの溜まり場。 そんなところに星風くんみたいな人が現れたら、悲鳴が上がってしまうだろう。 最近のプリ機は勝手に盛ってはくれるが、より盛るために髪型をアレンジしたり、メイクをより一層極めたり、いわば「男子禁制」の雰囲気が漂う一面もある。 いやもちろん、彼氏と撮りに来ている子もいるはいるが、何となく彼氏が気まずそうにしているのが傍目に分かる。 そんなプリ機に向かって、ゲーム機コーナーを抜けようとしている、と。 「星風じゃん!」 「!」 突然呼び止められて驚いた。 呼び止めたのは、他校の制服を着た男子だった。 「星風って……、ああ星風!」 周囲にいた数名の男子が、呼び止めた男子の声に反応してこちらを向いた。 「ひっさしぶり〜! お前何してんのこんなとこで……あっ」 私の存在に気づいて、面々が目を見張った。 「女連れかよっ」 「……、」 女連れ。 もっと表現があるだろうに。 「お前、彼女持ちかよー。まぁ、いない方がおかしいか、この顔で。へー、そっかー。へー。なに、今日部活休みなの。俺たちはテスト休み。てかなに、いつから付き合ってんだよ」 中高と同じ学校出身なので、私が知らない交友関係ということは、この人たちは星風くんの小学校の友だちか? それとも……。 「いつからって……まぁ」 肩に腕を回されている星風くんが、いつものようにさらっとした視線を私に向けた。 「まぁもう……3年くらい」 「マ ジ で!?」 男子たちが大口を開けて絶句する。 はい、そうですね。 3年ほど、キスする関係にはありますが。 (明日、この関係は終わります) スカートの前で鞄を持ち、なんとも言えない表情で会話を聞いていると、 「ふーん、3年……ねぇ」 「!」 最初に声をかけてきた、メンバーの中でも一番強気でリーダー格の男が、私を上から下までジロジロと見据えた。 その見方といったら……。
/48ページ

最初のコメントを投稿しよう!

183人が本棚に入れています
本棚に追加