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「そ、そういうわけでは……ない、けど……」
そして私も本当にバカ!
嫌を嫌と言えないし、強く突っぱねることもできないし。
「そう……俺も。……あ、あれは。写真撮るやつ」
「写真? ……え、もしかして、プリクラ?」
「うん」
「えっ」
星風くんがプリクラなんて珍しい。
写真を撮られることも嫌いなので、こんな関係でありながら、実は一枚も二人で写った写真を持っていない。
「でもいいの? 星風くん写真は……」
「……山加となら」
「どっ、どうしたの? お店、女の子ばっかりだよ!?」
「山加となら別に……」
「ものすごく目が大きく写るよ!? 肌とか顎とかもシュ!って感じになっちゃうよ!?」
星風くんなら、私を含めたそこいらの女子よりも美人に写っちゃうだろう。
見てみたい興味と、女子としてそこはやめておいた方がいいという葛藤がせめぎ合う、
「まぁ、山加となら……」
「……………っ」
(嗚呼、もうっ!!!)
星風くんは天然120%で、無自覚でそう言ってるに過ぎないだろう。
山加と、山加となら、って、無自覚で!
嬉しすぎる無自覚に、鼻の穴がうにょうにょと広がってしまいそうな喜びを、どうにか奥歯で噛みしめて、私は結局、星風くんと写真を撮りたい欲に勝てなかった。
(冥土の土産って……ことで!)
自分に言い訳し、星風くんとゲームセンターの一角を目指した。
平日の放課後、女子高生、女子中学生たちの溜まり場。
そんなところに星風くんみたいな人が現れたら、悲鳴が上がってしまうだろう。
最近のプリ機は勝手に盛ってはくれるが、より盛るために髪型をアレンジしたり、メイクをより一層極めたり、いわば「男子禁制」の雰囲気が漂う一面もある。
いやもちろん、彼氏と撮りに来ている子もいるはいるが、何となく彼氏が気まずそうにしているのが傍目に分かる。
そんなプリ機に向かって、ゲーム機コーナーを抜けようとしている、と。
「星風じゃん!」
「!」
突然呼び止められて驚いた。
呼び止めたのは、他校の制服を着た男子だった。
「星風って……、ああ星風!」
周囲にいた数名の男子が、呼び止めた男子の声に反応してこちらを向いた。
「ひっさしぶり〜! お前何してんのこんなとこで……あっ」
私の存在に気づいて、面々が目を見張った。
「女連れかよっ」
「……、」
女連れ。
もっと表現があるだろうに。
「お前、彼女持ちかよー。まぁ、いない方がおかしいか、この顔で。へー、そっかー。へー。なに、今日部活休みなの。俺たちはテスト休み。てかなに、いつから付き合ってんだよ」
中高と同じ学校出身なので、私が知らない交友関係ということは、この人たちは星風くんの小学校の友だちか?
それとも……。
「いつからって……まぁ」
肩に腕を回されている星風くんが、いつものようにさらっとした視線を私に向けた。
「まぁもう……3年くらい」
「マ ジ で!?」
男子たちが大口を開けて絶句する。
はい、そうですね。
3年ほど、キスする関係にはありますが。
(明日、この関係は終わります)
スカートの前で鞄を持ち、なんとも言えない表情で会話を聞いていると、
「ふーん、3年……ねぇ」
「!」
最初に声をかけてきた、メンバーの中でも一番強気でリーダー格の男が、私を上から下までジロジロと見据えた。
その見方といったら……。
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