02.これ以上ダメって言える気がしない

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「星風、彼女が校庭でエロい顔してる」 「……は?」 同じクラスの星風彼方。 長身イケメンの、いわゆるハイスペック野郎。 普段は無表情っていうか、無頓着っていうか。 これだけ女子にキャーキャー騒がれてても、御構い無しのつまみ食いもなし。 最近では綺麗どころの先輩方までお目見えする始末なのに、以下同文。 最初は一緒にいれば俺も相乗効果でモテるかなってそんな理由だったけど、最近ではこいつのこういう顔を見るのが楽しくて一緒にいる。 こいつの無表情が崩れる、唯一の瞬間。 「ほら、彼女、めちゃくちゃ苦しそうな顔してる」 同じ学年の新原山加。 目立った特性、特になし。 顔は中の上(俺的ギリ)、スタイルは寸胴ペチャパイ(俺基準)、勉強ができるって話は聞かないし、見る限り運動はからっきしって感じだし、ハイスペック野郎の星風が長年付き合ってる子というには、ちょっと首を傾げたくなるロースペックの子だ。 なのに、星風ときたら、脇見よそ見つまみ食いなんて皆無なくらい夢中のようだから……。 (めちゃ従順に色んなアレコレを聞いてくれるとか……?) なんて、昼間っから目を細めてしまう想像をしてしまう。 校庭で体育をしている彼女は、鈍臭そうにボールを追いかけていた。 「……そういや久保って、彼女いないんだっけ?」 「……っ!」 無表情の仏頂面が、俺の柔なハートをザクリと傷つけた。
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