02.これ以上ダメって言える気がしない

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昨日の今日だ、さすがにいかんだろう。 (あんなキスされたら、私完全に……) 落ちるぞ、完落ちするぞ。違った意味で。 いや違わない。 勝手に「星風くん……好き……」とか口走っちゃうかもしれない。 欲情に駆られて「星風くん……もっと……っ」とか強請(ねだ)っちゃうかもしれない。 そんな自分が想像ついて、絶句する。 今まで無自覚に、どんだけ我慢してきたんだ。 星風くんの甘噛みキスで、私の中のアダルティーな部分が顔を出してしまっている。 下手に好きとか言って、本格的に振られたら冗談じゃない。 はわわわわと恐怖に呑み込まれていると、 「!!!」 ベッドに腰掛けさせた私の横に、星風くんが手をついた。 そしてちょん、と触れた唇。 「星……っ」 「黙って」 「……っっっ」 続いて落ちてきたのは、黙るしかない苦しいキスだった。 昨日から、一体どうしたのだろう。 「ほし、星風くんっ、待っ……」 「……待たない……っ、やめない」 「……っ!」 星風くんの息も上がっていて、それがまた、私を高揚させた。 真っ赤になっているだろう頬を隠すことさえできなかった。 星風くんの顔つきは、やっぱり変わらず無表情だったけど、そんな無表情の中でも、上がった吐息に、これまた強くキュンとした。 引き寄せられた身体。掴まれた腕。 屈んだ星風くんを見上げる形になった身体が、星風くんに呼応した。 ……もう辞めよう、って。 言わなきゃって思えば思うほど、唇を絡めてくる星風くんに、必死になって応えてしまった。 昨日まで知らなかったキス。 なのに、今ではもう、このキスしか知らないみたいに、びっくりするくらい求め合ってる。 星風くんの手のひらが、そっと優しく私の肩に触れた。 このまま倒してくれたら、私は続きを受け入れるだろう。 続きを知れば、私たちの関係はまた違った形で動き出すの? 「──……っ」 それを願うように、そっとまぶたを押し開けた。 それがキスに現れたのか、星風くんも気づいて、まぶたを開けた。 見つめ合って、息を飲む。 星風くんの瞳が熱…… 「ちょっと!?  誰か中にいるの!?」 「!!!!!」 ドンドンドンとドアを叩かれて、我に返った。 胸元なんて(はだ)てないのに、さっと隠してしまった私とは対照的に、星風くんは何もなかったようにドアに近づき、鍵を開けた。 「ちょっと!? ──あら、星風くん」 「すみません、間違って鍵閉めてました。……癖で」 そう言ってぴょこっと頭を下げる。 「山加、もう帰れる?」 先生の質問を受け付けないように、星風くんが私に聞いた。
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