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昨日の今日だ、さすがにいかんだろう。
(あんなキスされたら、私完全に……)
落ちるぞ、完落ちするぞ。違った意味で。
いや違わない。
勝手に「星風くん……好き……」とか口走っちゃうかもしれない。
欲情に駆られて「星風くん……もっと……っ」とか強請っちゃうかもしれない。
そんな自分が想像ついて、絶句する。
今まで無自覚に、どんだけ我慢してきたんだ。
星風くんの甘噛みキスで、私の中のアダルティーな部分が顔を出してしまっている。
下手に好きとか言って、本格的に振られたら冗談じゃない。
はわわわわと恐怖に呑み込まれていると、
「!!!」
ベッドに腰掛けさせた私の横に、星風くんが手をついた。
そしてちょん、と触れた唇。
「星……っ」
「黙って」
「……っっっ」
続いて落ちてきたのは、黙るしかない苦しいキスだった。
昨日から、一体どうしたのだろう。
「ほし、星風くんっ、待っ……」
「……待たない……っ、やめない」
「……っ!」
星風くんの息も上がっていて、それがまた、私を高揚させた。
真っ赤になっているだろう頬を隠すことさえできなかった。
星風くんの顔つきは、やっぱり変わらず無表情だったけど、そんな無表情の中でも、上がった吐息に、これまた強くキュンとした。
引き寄せられた身体。掴まれた腕。
屈んだ星風くんを見上げる形になった身体が、星風くんに呼応した。
……もう辞めよう、って。
言わなきゃって思えば思うほど、唇を絡めてくる星風くんに、必死になって応えてしまった。
昨日まで知らなかったキス。
なのに、今ではもう、このキスしか知らないみたいに、びっくりするくらい求め合ってる。
星風くんの手のひらが、そっと優しく私の肩に触れた。
このまま倒してくれたら、私は続きを受け入れるだろう。
続きを知れば、私たちの関係はまた違った形で動き出すの?
「──……っ」
それを願うように、そっとまぶたを押し開けた。
それがキスに現れたのか、星風くんも気づいて、まぶたを開けた。
見つめ合って、息を飲む。
星風くんの瞳が熱……
「ちょっと!? 誰か中にいるの!?」
「!!!!!」
ドンドンドンとドアを叩かれて、我に返った。
胸元なんて開てないのに、さっと隠してしまった私とは対照的に、星風くんは何もなかったようにドアに近づき、鍵を開けた。
「ちょっと!? ──あら、星風くん」
「すみません、間違って鍵閉めてました。……癖で」
そう言ってぴょこっと頭を下げる。
「山加、もう帰れる?」
先生の質問を受け付けないように、星風くんが私に聞いた。
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