02.これ以上ダメって言える気がしない

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「どうしたの、山加……、半日でボロボロ……」 「……へっ……」 どんな返事が来るかと、スマホを気にして早半日。 なんと星風くんから返信はなく、「既読スルーで終了!?」フラグに打ちのめされていた。 私との関係、なんて……。 (そんなものだったのか……) 決して短くないはずの3年という年月。 キスだけじゃなく、いろんなことをたくさん一緒に共有したはずだ。 そう、キスだけじゃなく……。 星風くんとのたくさんの思い出を思い出し、ボロボロと涙が溢れた。 私は何を、たかがキス一つに(こだわ)って。 私の唇なんか、いくらでも貸し出していいじゃないか、減るもんじゃなし。 それよりもたくさん、星風くんと一緒に、色んなものを見たし、色んなものを食べたし、感じたし。 たくさんの思い出を貰っていた。 一緒に過ごした時間を貰っていた。 (なのに、私ったら……っ) 自分の視野の狭さを痛感し、慌てて頬を伝った涙を拭いた。 泣いてる場合じゃない。 一刻も早く、星風くんが新しい誰が見つけてしまう前に、やっぱり取消、訂正、無し無し! と、叫ばないといけない。 私が好きで星風くんとキスしている。 一緒にいる。 ……それでいいじゃないか。 「蒼ちゃん、私、ちょっと行ってくるっ!」 「えっ、どこにっ」 「星風くんの……とこ、ろ……」 と。 急いで教室を飛び出そうとしたら、ドアのところにまさかの星風くん。 ドアに手をつき、気怠そうに、いつもの如く無表情で無関心な視線を私に投げかけている。 だけど今は、ちょっと苦しそうに、少しだけ眉を顰めて。 「これ、どういうことか、説明して」
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