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そのまま強引に手を引かれて、半ば星風くんに倒れ込むようにして教室を後にした。
その時の、女子の悲鳴といったら。
隣のクラスの人たちまで出てくる始末。
ああ、また明日、質問攻めの嵐だろう。
「ほ、星風くん、部活は……っ」
「カンケーない」
「カ……っ」
関係ない。
これ以上ないくらい、遮断の言葉。
私に踏み込んで欲しくないってこと?
口出しするなってこと?
冷たい響きに涙腺が緩むのは、一度涙を流してしまったせいか。
込み上げてくる涙をどうにか呑み込む。
呑み込む……も。
「で。このメールはいったい……、って。なんで泣いて……」
振り返った星風くんが、私を壁に追い込み、壁に手をついてようやく気がついた。
星風くんの影になるように立たされた私は、我慢が足りず、涙が頬を伝っていた。
「……そんなに、俺に……」
星風くんはそこで言葉を切ったけど、言わんとしていることは空気で分かった。
──そんなに俺に、会いたくなかった?
って、きっとそう、言いかけた。
言わんとしていることは、なんとなくその空気が伝えてくれる。
今だって、きっと今までだって。
なのに私は──私たちは──関係の言及には敏感なんだ。繊細なんだ。
好きって言われないと、好かれているのか分からない。
付き合おうって言われないと、他人に恋人って答えられない。
他のことなら空気で察せられるのに、何故なんだろう。
「星風くんにとって、私っていったい……」
涙と一緒に込み上げた。
やっと、聞けた。
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