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「山加いる?」
「──!!!」
放課後、私の悩みなど露程も思わない星風くんが、飄々とした顔で私のクラスを訪れた。
「や、や、山加ちゃんなら今、後ろのドアから……っ」
「!」
こっそり下校しようとしていた。のがバレてしまった。
「……山加」
ムッ、と。
クールで表情の崩れない星風くんの声が、いつもよりワントーン低くなる。
今日は星風くんの部活が休みの日。
この日は決まって迎えに来てくれるのが分かっていた。
本当なら、今日言ってしまったっていいのに、明日……と延ばしてしまう私は、やっぱり星風くんに心底惚れてしまっているんだと思う。
とは言え、星風くんが現れて「また新原さん!?」と騒動になる前に退散しておきたかった。
最近妙に大事になる。
それはつまり、星風くんの注目度が高くなってきていることに比例する。
「なにやってんの」
「な、なにって……、蒼葉ちゃんと帰ろうかなっと」
「ちょっ、人を巻き込っ」
そう言いかけた蒼葉ちゃんの口元を押さえて、にっこりと星風くんと向き合った。
「蒼葉ちゃんとね、最近人気のフルーツパフェを食べに行こうかなって」
ただでさえ羨望の眼差し。いや、嫉妬心も上々。
星風くんと同じ中学出身の羨ましい子扱いから、最近では先輩たちまで私を見に来る始末で、一目見るなり「釣り合わない」と判定を下される。
釣り合わないことなんて、重々分かっている。
身の程は弁えているつもりだ。
だからこそそろそろ、私もこの関係を終わらせないといけないと思っている。
ダラダラと流れる汗を背後に隠し、星風くんの許可を待った。
星風くんは強引だけど、私のこういう意向にはほぼほぼ同意してくれる。
だから今回だって同意してくれる……、
「……それ、俺も行く」
「えっ!?」
……はずだった。
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