01.セフレならぬキスフレンドってやつ

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「山加いる?」 「──!!!」 放課後、私の悩みなど露程も思わない星風くんが、飄々とした顔で私のクラスを訪れた。 「や、や、山加ちゃんなら今、後ろのドアから……っ」 「!」 こっそり下校しようとしていた。のがバレてしまった。 「……山加」 ムッ、と。 クールで表情の崩れない星風くんの声が、いつもよりワントーン低くなる。 今日は星風くんの部活が休みの日。 この日は決まって迎えに来てくれるのが分かっていた。 本当なら、今日言ってしまったっていいのに、明日……と延ばしてしまう私は、やっぱり星風くんに心底惚れてしまっているんだと思う。 とは言え、星風くんが現れて「また新原(にいはら)さん!?」と騒動になる前に退散しておきたかった。 最近妙に大事(おおごと)になる。 それはつまり、星風くんの注目度が高くなってきていることに比例する。 「なにやってんの」 「な、なにって……、蒼葉ちゃんと帰ろうかなっと」 「ちょっ、人を巻き込っ」 そう言いかけた蒼葉ちゃんの口元を押さえて、にっこりと星風くんと向き合った。 「蒼葉ちゃんとね、最近人気のフルーツパフェを食べに行こうかなって」 ただでさえ羨望の眼差し。いや、嫉妬心も上々。 星風くんと同じ中学出身の羨ましい子扱いから、最近では先輩たちまで私を見に来る始末で、一目見るなり「釣り合わない」と判定を下される。 釣り合わないことなんて、重々分かっている。 身の程は(わきま)えているつもりだ。 だからこそそろそろ、私もこの関係を終わらせないといけないと思っている。 ダラダラと流れる汗を背後に隠し、星風くんの許可を待った。 星風くんは強引だけど、私のこういう意向にはほぼほぼ同意してくれる。 だから今回だって同意してくれる……、 「……それ、俺も行く」 「えっ!?」 ……はずだった。
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