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結局、訊ねられないまま、いつものように星風くんの後ろに乗せられ、街に到着した。
すると。
「定、休日……!?」
でまかせで始まった今日のプランだったが、星風くんの後ろに座っている間に、私の胃袋はすっかりフルーツパフェの気分になっていた。
定休日という札の前、ショックの色を隠せずにいると、背後で自転車に跨ったままの星風くんが気怠そうな声で言った。
「どうする? ほかの店、捜してみる?」
「……ううん、いい……。今日は縁がなかったと思って諦める……」
それによくよく考えたら、今月既に金欠だ。
今月の星風くんは、やたらと私を外に誘った。
映画を観たり、水族館に行ったり。
恋愛ものの映画を観るのは恥ずかしいから、気になる実写化映画は観ることができず、基本は外国発のアクションもの。
息呑む展開、背筋が凍る展開に震えていると、そっと私の手を握ってくれたりする。
ドキッとして一瞬で映画のことなんか吹き飛ぶ私とは裏腹に、星風くんは至ってクールな顔で、しかも表情をピクリとも変えることなく、怖いシーンも緊張するシーンも真っ直ぐに見入っている。
ほんの、ほんの数パーセントでも、私のドキドキが感染ったらいいのに……!
と、念を込めようとすると、私のその力に気がついてか、星風くんの瞳がこちらを向く。
こちらを向くと、目と目が合う。
目と目が合うと、決まって首が傾げられ、その何色にも染まらない瞳が、私の唇を捉える。
クライマックスだとか、めちゃくちゃ良いシーンだとか関係なしに、何にも固執しない星風くんの唇が触れて、離れる。
ただそれだけで、私は星風くんのことしか考えられなくなって、星風くんでいっぱいになってしまう。
……毎日が、その繰り返し。
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