第6話 【貧乏神《びんぼうがみ》奪取作戦《だっしゅさくせん》】

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    北條はいっさい表情(かお)に出さない。むしろ話が早い。 「その御方は──『貧乏神』様にござります。その者、厄災(やくさい)元凶(げんきょう)につき、至急(しきゅう)お戻し願いたい」 あまり刺激的なことは言いたくなかったが、北條はあえて仕掛けた。 「彼は──わたくしの”客人”です」 「たいそう長期間滞在させてる客人ですなァ~」 月弥がバナナを食べながら云った。 壁板(かべいた)隙間(すきま)から(のぞ)き見していた家来も月弥を取り押さえようとしたが、うしろの影で城主が止めた。 「はっきりいえば、あンたが連れてきた貧乏神のせいで、国がピンチになっちゃってるってワケ。ましてやここは何万という経済回線を担ってる流通国家なんだろ?このままじゃこの国はさらにおっちんじまって世界恐慌(せかいきょうこう)なんてこともありうるンだぜ?城主のメンツもなにもねーだろうがよ」 城主が影でごくりとつばを飲み込む。月弥が吐けずにいた(なげ)きを代弁(だいべん)したからだ。 「仮に落城(らくじょう)し、国が滅んだとしても、娘の望むことあらばきっと心中(しんちゅう)を察して文字どおり───ともに心中(しんじゅう)という道をお父上ならおえらびになさるはず」 そのとおり!!ばたりと壁が倒れ、突っ伏した家来を踏みながら我が娘に添い、肩を抱いた。 「よいのじゃ。おまえがそれで幸せなら」 「アンタさっき娘の目ェ覚まさせてくれっていってただろうが!」 「なにを申す!わが最愛(さいあい)の娘の望んだことだぞッ」 「あの雑巾老人(ぞうきんろうじん)を追い出せって」 「ふ、不届(ふとど)きッ!戯言(ざれごと)をほざくか」 「どっちがだよ!!(# ゚Д゚)」 「というわけで、なにがあろうと、わたくしの心は揺らぎません。ご親切痛み入ります。どうぞ」 ──御引取(おひきと)りを。 「あーあーあーこんなバカ親子相手にしてたらこっちの身がもたねえや。どうなっても知ンねえかんなァ!」 悪態(あくたい)をつき部屋を去る月弥に、城主は打ち首にするぞ!と叫んだ。  
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