第6話 【貧乏神《びんぼうがみ》奪取作戦《だっしゅさくせん》】

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    「貧乏神さまはまったく影響(えいきょう)がなかったとおっしゃりたいのですか?」 「いいえ。そうは申しません。あなたが連れてきた貧乏神さまは、単にその”きっかけ”を与えたにすぎぬのです」 静季が不安そうに石姫をみやる。北條に論攻(ろんぜ)めされ、顛末(てんまつ)をすこしばかり(あわ)れんだからだ。 「もしや、貧乏神さまを見た家臣や問屋が『こうなってはいかん』とおのが心に決め、野心を爆発させたとも考えられます」 「(うそ)です。彼ならだれにも見られぬようあの部屋(へや)に・・・ッ」 きん───と石姫の脳内(のうない)に電気が走った。 これ以上口を(すべ)らせてはいけないと思ったのだろう。 北條は動揺(どうよう)を確認し、つづけた。 「この現実は、起こるべくして起こっている事象(じしょう)」 「───」 「そうでなければ貧乏神さまといえども(きり)となり消滅(しょうめつ)いたしましょう」 みんな──心に貧乏を抱いてるものなのですね、と静季がつぶやく。 「理屈(りくつ)はわかりました。わざわざそんなことを(さと)しにわたくしの元へ?」 「本筋(ほんすじ)は、これからでございます」 たがいの心理戦は北條が優勢(ゆうせい)に立ち、いよいよ佳境(かきょう)に差し掛かる。 「『(かね)天下(てんが)(まわ)(もの)』と人は云います。この世にある金は一定量。それが増えたり減ったりで経済はまわる」 「それがなにか?」 「それは、”心”もまた(しか)り」 「───」  
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