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「わしら貧乏神は、貧乏界からくだされた素質ある人間に取り憑くことによって、世界の均衡を保つのが仕事じゃ」
貧乏は幸福の上に成り立ち、だれかの貧乏はだれかの富によって形成されている。質量は一定。その天秤を動かすのが“摂理”が生み出した貧乏界の役目だ。
「貧乏──つまり無精で働くのと考えるのが嫌な、所謂”馬鹿”と呼ばれるヤツじゃな」
「ただいま戻りました!!」
がらりと戸が開き、貞吉が入ってきた。
「・・・あ(‘Д’)」
貧乏神のひとつが貞吉の背中におぶさった。
「な!!ななななななんすかこの人!!?」
一同はため息をつく。
乾坤堂の経営破綻の原因は多種あるが、貞吉の“オモリ”がネックになってるのもまた原因のひとつだ。
「やっぱコイツなんも考えんといままで生きてきたんだなろうな」
「考えすぎるのはたしかによくないですが、考えすぎないというのも」
「底が見えるヤツだ」
「貧乏神だよ、そいつ」
び、貧乏神!!?──なぜかおのれの尻尾を追いかける犬のようにくるくる回り始めた。
捕ろうとでもしているのか。
「やっぱバカだわ」
「素質はあるがその辺にしとけ、八百六十八号よ」
ひとりに促され868号はしぶしぶ降りた。
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